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2018年2月 9日 (金)

あなたはいくつ職をもっていますか?

 下田に移り住んで15年が経つ。

 この間、学んだことは多いが、その中でも特筆すべきは、人間の暮らし方だ。
 難しく言うと、そうなのだが、簡単に言うと、一人の人がいくつも生業と呼べるものを持っていたことである。
 現在の学校教育、あるいは日本社会の中では、どんな職業に就きたいかという質問が当たり前にあり、当たり前のように一つの職業を選択する。
 そしてそれが、いかにも自然のように思いこまされている。
 会社員なら会社員、公務員なら公務員、医者、教師、商店主、料理人などである。
 外国人にこんなことを言われることがある。
「何年も勤めていたら飽きちゃうだろう?」
 たしかにそうである。
 しかし日本に限っては、正規雇用のほうが非正規雇用より安定し、格が高いことになっている。
 単に同一労働同一賃金を実現できない、不平等があるだけなのに、変な話にすり替わりがちである。
 下田に来て驚いたのは、近所の親しい大工さんが、言ったひと言だ。
「夏? 夏なんか大工仕事をやるもんじゃねえ。暑すぎるだろ?」
 大工がそういうことでいいのか。
 なるほど下田は観光地で、夏ともなれば海水浴客が押し寄せるので、すべての建築がストップしてしまう。公共工事の土木も、道路渋滞の観点から完全にストップし、その間、草刈りなどの仕事に汗を流すのだ。
 では件の大工はどうしているのかと思ったら、潜るのである。漁業権を持っているので、アワビやサザエを獲って、そこそこいい収入になる。
 夫は大工でも、女房に民宿をやらせている家もある。そんな女房は、冬には磯で海苔やひじきを収穫し、もちろん畑も耕しているので、民宿のおかずはタダようなものとなり、てんこ盛りに出してはお客に喜ばれ、繁盛している民宿もある。
 テングサをとる女性たちもいる。昔は乳牛もやっていた。冬には炭焼きもあったそうだが廃れてしまった。
 ここ数日は、近所でずっと木の伐採が行われていた。四十年放置された林をきれいにしている。
 ビワの木が多かったので、落ちたビワを目当てに、野鼠が繁殖し、野鼠をエサにする青大将(へび)が跋扈し、さらに青大将が好物なイノシシが、居を構えていたそうである。
 食物連鎖というやつだ。
 木々を伐採したら、四軒のイノシシの巣が見つかり、大きな穴もあったとか。
 この伐採を受け持ったのは、近所の建具屋である。そう言えば、畳屋は釣りの名人だった。
 さて僕は?
 作家以外にあまり取り柄がないと来ている。
 そもそも換金仕事が苦手なので、困ったものだなあ。

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