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2018年2月16日 (金)

「腹ペコ騒動記」が「深夜特急」を越えたって!? 沢野ひとし画伯迷語録

 昨日数年ぶりに沢野ひとし画伯(椎名誠さんの著作のイラストで有名です)から電話があった。

 沢野さんとは、初めて会ってからもう十五年以上になるが、僕より長い付き合いなのが、いけみのほうである。
 いけみはその昔から、沢野さんのファンで、個展があるたびに通っていたらしい。
 ある年の個展でオーストラリア人家族と仲良しになり、彼らがドバイに移住したことから、娘さんが支配人をするショッピングモールで絵の個展を開かせてもらったこともある。
 話が逸れたが、数年前に、沢野さんが突然愛車のベンツを駆って、下田に遊びに来た。
 この時泊まったのが、いけみの絵を多数買ってくれているペンション、ガーデンヴィラ白浜である。
http://www.gardenvilla.jp/
 ここには洒落たバーコーナーがあるのだが、そこで僕たちは大いに飲んで、以来すっかり仲良くなった。
「大五クン、海の小説を書きなよ。せっかく海のそばにいるんだから」
 沢野画伯のひと言で書いたのが、『黄金のニート』(徳間文庫)という小説だった。
 沢野さんも、タダで下田から帰りはしない。数か月後、僕といけみのことをモデルに、『本の雑誌』に小説のようなエッセーのような話を掲載している。
 昨日の電話は、たぶん、いけみの個展が始まったので、そのことだろうと思っていたら、画伯は、開口一番こう言って下さった。
「大五クン、今度の本は面白かった。よかったよ。君は世界から見る目を持っている。それが存分に発揮されたいい本だった。ウン、よかったよ」
「ありがとうございます!」
僕は素直に喜んだ。
「ウン、沢木耕太郎の『深夜特急』よりこっちの方が面白い。あれは、ナルシストっぽくてさ、ちょっとウソっぽい。でも君のはね……」
 言われなくてもわかる。
 スッテンコロリ系である。ミスをやらかし、トラブルに巻き込まれがちである。そして笑ってすませる。
「いいなあ、いい本だったよ」
 それからは、今手がけている僕の作品のこと、日中関係、画伯の旅の計画、画伯の友人が南伊豆に越したので、近く行った折には合おうとなって、話は終わった。
「ああ、よかったよ。今日は大五クンに電話してよかった。内向きでよくわからん連中が、大声を上げているようじゃ、ダメだよ。君のような人が、もっと本を書いて、世界から見るようにしないとね。ウン、今日は電話してよかった」
 それにしても画伯は、相変わらず沢野流である。
『腹ペコ騒動記』が『深夜特急』を越えたなどという評価は、沢野さんにしかできないものだ。
 深夜特急のナルシズムは、多くの若者の心に刺さった。何かと不安な海外での一人旅は、ナルシズムに侵されやすいのである。それはネットでの旅行記などを見てもよくわかる。
 しかし僕はそんなことより、世界の在りかを知りたかった。
 それが僕の旅なのだ。
 そして世界を見て回るうち、世界から世界が見えるようになってきている。それがまた面白い。
 沢野画伯の嗅覚はタダならぬものがある。
 それにしたって、深夜特急越えとは……。
 また一つ、沢野画伯迷語録が生まれた(椎名さんの本には、沢野語録がいっぱいあります)。
 うれしくて、昨日は真夜中に飛び起きてしまった。

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2018年2月 9日 (金)

あなたはいくつ職をもっていますか?

 下田に移り住んで15年が経つ。

 この間、学んだことは多いが、その中でも特筆すべきは、人間の暮らし方だ。
 難しく言うと、そうなのだが、簡単に言うと、一人の人がいくつも生業と呼べるものを持っていたことである。
 現在の学校教育、あるいは日本社会の中では、どんな職業に就きたいかという質問が当たり前にあり、当たり前のように一つの職業を選択する。
 そしてそれが、いかにも自然のように思いこまされている。
 会社員なら会社員、公務員なら公務員、医者、教師、商店主、料理人などである。
 外国人にこんなことを言われることがある。
「何年も勤めていたら飽きちゃうだろう?」
 たしかにそうである。
 しかし日本に限っては、正規雇用のほうが非正規雇用より安定し、格が高いことになっている。
 単に同一労働同一賃金を実現できない、不平等があるだけなのに、変な話にすり替わりがちである。
 下田に来て驚いたのは、近所の親しい大工さんが、言ったひと言だ。
「夏? 夏なんか大工仕事をやるもんじゃねえ。暑すぎるだろ?」
 大工がそういうことでいいのか。
 なるほど下田は観光地で、夏ともなれば海水浴客が押し寄せるので、すべての建築がストップしてしまう。公共工事の土木も、道路渋滞の観点から完全にストップし、その間、草刈りなどの仕事に汗を流すのだ。
 では件の大工はどうしているのかと思ったら、潜るのである。漁業権を持っているので、アワビやサザエを獲って、そこそこいい収入になる。
 夫は大工でも、女房に民宿をやらせている家もある。そんな女房は、冬には磯で海苔やひじきを収穫し、もちろん畑も耕しているので、民宿のおかずはタダようなものとなり、てんこ盛りに出してはお客に喜ばれ、繁盛している民宿もある。
 テングサをとる女性たちもいる。昔は乳牛もやっていた。冬には炭焼きもあったそうだが廃れてしまった。
 ここ数日は、近所でずっと木の伐採が行われていた。四十年放置された林をきれいにしている。
 ビワの木が多かったので、落ちたビワを目当てに、野鼠が繁殖し、野鼠をエサにする青大将(へび)が跋扈し、さらに青大将が好物なイノシシが、居を構えていたそうである。
 食物連鎖というやつだ。
 木々を伐採したら、四軒のイノシシの巣が見つかり、大きな穴もあったとか。
 この伐採を受け持ったのは、近所の建具屋である。そう言えば、畳屋は釣りの名人だった。
 さて僕は?
 作家以外にあまり取り柄がないと来ている。
 そもそも換金仕事が苦手なので、困ったものだなあ。

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2018年2月 2日 (金)

旅行者の話は面白い!

 先日大阪で行ったトークショーの3件目はワンダラーズ大阪でした。

http://wandererslife.jp/
 中の島にあるかなり古いメリヤス会館の建物で、煉瓦作りのそれは、昭和初期の建築。
 年季の入ったモダンな階段を上がった四階にある。
 20人くらい集まってくれて、中はぎゅう詰めで、さながらどこかのゲストハウスで無駄話をするような雰囲気になりました。
 最初は僕が話したのだが、メンツを見れば、知っている人だけでも面白い話が聞けそうだと思った。
 そこで、話の中盤以降は、来てくれた人たちに話をしてもらいつつ、僕が間の手を入れる感じで、展開させることにした。
 するとこれが面白い。
 キューバの話になって、トップバッターはFさんである。
 Fさんは、戦場ジャーナリストの加藤健二郎氏の旧友で、ニカラグアの内戦をうろついた猛者である。
 それから三十年も経った今では、猛者の面影はなく、いや、当時の写真を見ても、どちらかというとやさ男の印象だった。
 ニカラグアあたりで、女性兵士にモテモテだったと加藤さんは言うが、真相は明らかではない。
 そんなFさん、会社の長期休暇制度を利用して、昨年しばらくキューバを始め、中米を旅していたのだ。
「キューバでは、広場にみんな集まって、電波のよさげなところを探して、WIFIをやるんです。アメリカ人旅行者? トランプになって少なくなったようですね。海外から民宿の予約は難しいですが、行けば、たいがいありますね」
 キューバの治安は断然いいのだが、中南米となるとそうはいかない。
 次はDちゃんに話を振った。
「コロンビアはまだよかったですが、サルバドルの治安は最悪でしたね。ゴミが町を舞っていて、殺伐とした印象でした。夜は出歩かないのが賢明でしょう」
 ……なるほど。
 すると次に話に出たのは、Nさんのサハ共和国話である。
 ロシアの世界でもっとも寒い地域と言われる。
「ヤクーツクまで飛行機で飛んで、さらにそこからある村に行きました。ネットを駆使して、サハの人はいないか探しまくったら、その村にいる学校の先生と知り合ったのです」
 そしてやりとりし、宿や食事、車を用意してもらった。
 いまどき、ロシアもかなり自由に旅行ができる。
 ビザを取って、いざ、極寒の町である。
「マイナス30℃近かったです。でも先生のおかげで300人程度の村ですが、よくぞ来たって、毎日宴会続き、学校で講演もしてきました! 寒くても一応外を歩きました。もちろん寒かったです」
 ここでKさんのクルディスタンの話が登場である。
 イラク北部に位置し、アルビールを首都にして独立しようとした地域だ。
「その頃は、アルビールに中東から直行便が出ていたのです。全然安全! 食料もホテルも普通にあって、ごく普通の中東の町でした」
 危ないイメージの中東だが、その昔から戦争さえ起らなければ、旅がしやすい。痴漢の多さが玉にきずという国がほとんどである。
「でも独立したいって宣言したとたん、中東各国から非難を浴びて、直行便もなくなったので、今は陸路でトルコから入るしかないです」
 そんなところに、普通に行け、しかも安全だと言うのだから、さすがに旅行者の話は面白い。
 最後にHさんである。彼女は中央アフリカに招かれて行っている。
「道はガタガタ、シャワーはなく、溜め水で水浴びします。電気は時間制、写真も許可制、レストランもあまりありません。移動の途中はバナナで食いつなぎ、危険なせいかSPが二人つきました。ゴリラと背の低い民族はいますが、観光はまだまだです。カメルーンから入ります」
 ここまで来ると、意識が遠くなりそうなほど、世界の面白さはいまだ健在である。
 こんな旅行者たちの話を、みなさんも聞いてみたいとは思いませんか。
 無茶苦茶面白いです。
 そんな企画があったら、僕が是非司会をうけたまわりますので、どうぞよろしくね。
 というか、ちょくちょくやってみたいです。

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