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2016年1月 9日 (土)

下田が死ぬ日

 僕の暮らす下田では、津波でダメージを受ける以前に、静岡県による巨大防潮堤建設によって、殺されるかもしれません。

 そこで僕なりの提言を書きました。
 ぜひ読んでみて。

「下田市吉佐美区の巨大防潮堤計画に関しての提言」

       作家・下田市観光大使 岡崎大五

 

 吉佐美区に巨大防潮堤を建設する計画が進んでいる。

 https://www.pref.shizuoka.jp/kensetsu/ke-320/measures/shizuokamodel.html

これは「静岡モデル」と命名された津波防潮堤計画で、すでに浜松では建設が始まっている。

下田市吉佐美区に、静岡県より吉佐美大浜防潮堤建設の青写真が示されたのは昨年のことである。田牛で11メートル、吉佐美大浜、入田浜、多々戸浜で13.5メールの高さの巨大な壁がそそり立ち、海はもちろん、伊豆七島も、空も見えなくなってしまうのだ。

【現在の吉佐美大浜左端】

Img_2012_640x480

                             

【県が示した青写真による防潮堤の高さ】

Img_2016_640x480

 

 今後、県や下田市と地元との話し合いが行われるのだが、これは吉佐美区のみならず、下田はもちろんのこと、ひいては伊豆半島全体にとっても大きな問題である。

下田では、伊豆急行が運行されてから、夏の海水浴客を中心に観光化が進められてきた。

70年代には吉佐美区で、より安全な海水浴にするためにライフセーバーを支援する活動が始まり、日本で唯一のライフセーバー専用宿泊棟が、区によって海岸近くに建設されている。これで夏の監視活動だけでなく、一年を通した訓練も常時行える体制が整った。

地元の理解や支援を得られたことで、下田ライフセービングクラブは、今ではメンバー数276名と日本最大のクラブにまで成長した。ライフセービングの全国大会で何度も全国一に輝き、オーストラリアのマルチドーライフセービング(クラブ)との交流も深め、毎年のように交換留学生が行き来している。

サーフィンでは、下田市出身の大野修聖選手が全日本チャンピオンになったばかりか、下田の海はサーファーにとって、美しき楽園と評価されるほどである。サーフィンは年間を通じて楽しめる。極寒の真冬を除いても、下田の観光が課題とする「観光の通年化」に大いに寄与している。

また毎年9月には、下田の若者たちが企画し始めたイベント『ビッグシャワー』が吉佐美大浜で行われ定着している。

これら海に関する団体やショップ、漁業、観光関係者などが集うのがマリンネット下田で、自然環境の保護などを活動目標に掲げるほか、東京オリンピックのサーフィン会場誘致に向けても、いち早く行政に働きかけている。

この半世紀で、下田にはマリンスポーツ文化が育ちつつあり、それが観光産業の柱ともなっているのだ。

須崎や田牛地区では、児童、学生の学習旅行誘致に取り組み、一定の成果を上げ、「伊豆自然塾」では、そんな子供たちに磯体験を提供している。吉佐美大浜に来る絶滅危惧種のアカウミガメの産卵も、下田海中水族館や大学の研究室が共同して、観察、保護などに取り組んでいる。下田市でも「世界一の海プロジェクト」を実施し、マリン関係の観光化を充実させてきている。

海と一体化した美しい自然こそが、下田の最大の魅力であり、それは白人を中心とした外国人旅行者にも浸透しつつある。事実、伊豆急では、伊豆急沿線で、下田での白人の乗降客が突出しているという。

フランスの世界的ガイドブック『ミッシェラン』では、下田は観光地として★★を獲得し、これは鎌倉や高山と並ぶ高評価となっている。

そんな美しい自然環境を守るため、吉佐美区では、区民総出で、初夏と秋にはビーチも含めた清掃作業を行い、また夏季の海水浴場開催では、区が駐車場管理、海の家の経営などを行い、地元民の雇用を生むと同時に、ビーチからの反社会的勢力の排除、収益をライフセービング活動費や、無料シャワー、トイレ施設の管理費に充てるなど、社会的な貢献度も大きい。

巨大防潮堤建設は、津波防災であり、人命を重んずる政策であるのは間違いない。

しかし自然破壊のみならず、こうした文化の破壊、この町の歴史の否定をもはらむものであり、津波が来る以前に、この町の将来に向かう大きな希望を破滅させかねないのだ。

現在の計画ならば、海水浴客、サーファーは半減し、「ビッグシャワー」は終了、その他のマリンスポーツや学習旅行なども衰退に向かうにちがいない。

海を拒絶するようなイメージしか持てない巨大防潮堤が、来遊客の心理にどのように作用するかは、あまりに明白であり、下田の過疎化には一層の拍車がかかることだろう。

巨大防潮堤建設が、住民が手塩にかけて育ててきた、下田のマリン文化やこの町の未来を殺すようなものであってはならない。

吉佐美区における巨大防潮堤建設には、日本の土木技術の粋を生かしたものが選択され、自然との調和を目指してほしい。人の住まない、観光客も訪れない、遠州灘の巨大防潮堤と同じ考え方で、安直に建設計画を推進するなど、早計に失すると断じざるを得ない。

あるいは日本の最先端の土木技術を使ってなお、自然を破壊し、地域住民の生活や文化、未来と海とを遮断するものしかできないならば、市民参加型の熟考が必要である。

一部の者たちで考えまとめられるほど、吉佐美区防潮堤建設計画は、単純なものではなく、また防災か、景観かという二者択一の問題でもないのだ。

吉佐美区では、3.11以降、独自の津波防災対策を行っている。高台の緊急避難地の確保、そこへ通じる道路の整備などである。さらに土地所有者と交渉し、高台に倉庫を建て、順次、災害用物資を移行する予定となっている。

災害では、被災後72時間をどう命をつなぐかが最優先される事項だ。

津波対策は、巨大防潮堤の建設だけでなく、こうした地域での防災対策、遅れに遅れる下田市の防災対策との連携の中で、総合的に勘案、構築されるものである。

まずは、広く情報を開示し、行政、関係者、市民の間で議論されるべきである。

仮に今の青写真のまま巨大防潮堤が建設されれば、川勝知事の肝煎りで発案され、県主導で行われている「伊豆ジオパーク」の、ユネスコによる世界ジオパーク認定も危ぶまれることになるだろう。

先の富士山世界遺産認定において、三保の松原に設置されたテトラポットの改善をイコモス(世界遺産委員会諮問機関)から要求されているとおり、景観を損なう土木建設は、「保護」ではなく「破壊」と認定されるのだ。

世界ジオパークでも当然のこと、現地におけるジオパーク(自然)の「保護」が最重要視されている。

巨大防潮堤は、まぎれもなく自然の「破壊」と判断され、すなわち「静岡モデル」そのものが、ユネスコによって否定されかねない事態となるだろう。

静岡県が熱心に取り組んできた「伊豆ジオパーク」の世界ジオパーク認定が、同じく県主導による巨大防潮堤建設で否定されることほど、愚かな選択はないのではないか。

また巨大防潮堤建設は、吉佐美区だけでなく、海水浴場のある外浦区や白浜区でも同様に進められている。

もはや下田に与えられたミッシェランの★★も風前の灯と言ってよいのではないか。

さて、みなさんは、この巨大防潮堤建設をどのように考えますか? (2016.1.9)

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コメント

つい 2~3日前、寝耳に水の如く が、計画実行段階に思える内容に ビックリです。
遠州灘方面と違う、半島の裏側になるので 巨大な 成り行きとは思えない・・・房総半島の西側の東京湾内に 押し込む津波対策をどう?するかのほうが、囁かれてないでは ちぐはぐな 事でしょう・・・ 浜岡原発の例を 同一にはしないで欲しい断固反対です、、、

投稿: <大> | 2016年1月 9日 (土) 19時53分

随分勝手な解釈、且つ無知な意見と感じます。地震・津波発生のメカニズム、過去の大震災から学んだ、被害を最小限に抑える為の堤防じゃないんですか?人命より景観のほうが大事なんですか?美人の前に不細工は立つなって事ですか?建設を批判する前に地震・津波の事を勉強したらどうですか?

投稿: | 2016年1月20日 (水) 21時20分

防潮堤が被害を最小限に食い止めるとは限らない。これは土木を専門とする方々の考えです。津波対策は、総合的に考えるべきなのです。

投稿: | 2016年2月16日 (火) 09時26分

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