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2009年6月 5日 (金)

チビ太

 チビ太が我が家にやってくるようになってから、そろそろ二年が経つ。

 チビ太は家の周囲の森に暮らすヤマガラだ。体長は十五センチくらいとスズメよりも一回り大きい。頭は黒く、モヒカン刈りみたいに白い線が入っている。白い顔に首はマフラーをしたように黒い。オレンジ色の腹に灰色の羽を持つ。「ツツピー! ツツピー!」と鳴くのが特徴で、森を歩いているときなど、ヤマガラの鳴き声を聴いた人も多いにちがいない。

伊豆高原の山の中にあるそば屋で、窓の外でヤマガラを餌付けているのを見つけた。店主に訊ねたところ、ヒマワリの種をやっているという説明だった。

 ヤマガラは種を割って中身を食べる本能があり、ヒマワリの種は、そんなヤマガラの本能を十分満たしてくれる餌らしいのである。

 さっそくスーパーで買ってきて、ベランダに皿を置いて入れておいたところ、来るようになったのがチビ太だ。

 すると数羽のヤマガラも姿を見せるようになり、のべにすると六羽くらいを見かけた。

 毎日のように見ているので、それぞれ個性があることがわかる。体の大きな太っちょは臆病者で懐かない。寝癖がついたように、いつも頭の毛が乱れたやつもいる。鳴き声が汚いやつもいた。

 そんな中、チビ太は真っ先に懐いた。手から餌を食べるようになったのだ。ベランダに出るとどこで見ていたのか跳んできて、電線や木の枝などにつかまってこちらを見て鳴く。手の平にヒマワリの種を置いてやると、急降下してすっと指の先に止まるのだ。嘴で取った餌が気に入らないとプイッとその場で捨てる。しっかりぼくの顔を確認したあと飛んでいく。

 そうして電線や木の枝に止まって、両脚でヒマワリの種を押さえ、嘴で突いて割って中身を取り出し食べるのだ。

 朝、ぼくがベランダに出る前から姿を認めると、羽をバタバタやりながら嘴で窓をノックすることもある。あるいはリビングで昼寝をしていたときには、ぼくの足の親指に止まって、こちらを見ていた。

 鳥は目が左右についているので正面は見づらいようで、首を傾げて目を向ける。そんな仕草は首を振っているようで愛らしい。

 そのチビ太が昨年、ついに恋人を連れてきた。恋人はさすがに手からは取って食べれない。チビ太がぼくの手から取ってきたヒマワリを脚ではさんで割ってやり、恋人に口づけするように食べさせていた。

 なんかぼくに懐いているような話になったが、実はチビ太は妻により懐いている。彼女が手を挙げるとどこからともなく飛んできたりして、指の先に止まるのだ。餌がないことがわかって、「ピーピー」鳴いたりもする。逆にうれしいときなど、餌を持って飛んでいく途中で、「ツツピー! ツツピー!」と喜びの声を響かせる時もある。

 さて、今週の月曜日のことである。

 見慣れない鳥が二羽飛んできた。

 ヤマガラと同型なのだが、体の色が鮮明でないのだ。とくにオレンジ色がはっきりしなく、全体的に灰色である。てっきりぼくはヒガラかと思った。

 しかしすぐにチビ太とその妻が飛んできた。

 チビ太はぼくの手の平から餌を啄ばむと、灰色のやつのところに飛んだ。そして口づけするように割ったヒマワリの種をやっているのだ。灰色の二羽は、チビ太とその妻を追いかけるように森の中を飛んでいた。

「子供ができたんじゃない?」

 と妻が言った。

 我が家に来た鳥好きの人々も、チビ太が懐く光景を見て「めずらしいねえ」と感心している。手から餌を与えられたKサンは「心がポッとあったかくなるねえ。やさしい気持ちになったよ」と言っていた。ぼくの妹など、真冬にも関わらず一時間以上もベランダで、ずっと手に平に餌を置いて、何度も往復するチビ太たちを飽きもせずに見つめ続けた。子供達は一様に目を丸くし、手から餌を与えられると飛び上がってはしゃいだ。

 そして今朝も我が家の周囲にチビ太一家の鳴き声が轟いている。

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