「誰も国境を知らない」
鳥取県のかに籠漁船がロシア国境警備局に拿捕された。
ロシアの排他的経済水域で操業していたと見なされたからである。排他的経済水域とは、経済的な主権が及ぶ水域のことで、ウィキペディアによれば、国土面積では世界で60位の日本も、排他的経済水域を含めれば世界第9位の面積を持つ大国になる。
さらにロシアとの関係では、北方四島との交流事業の一環として行われてきたビザなし交流が危機に瀕している。
というのも、支援物資を持参して国後島を訪れた外務省職員に対して、現地のロシア当局が出入国カードの提出を求めてきたからだ。
これに対して、外務省職員は提出を拒否し、今後両国間で話し合いが行われることになっている。
ふつうに考えれば、ロシア入国にはビザが必要である。
ところが北方四島に関しては、日本政府は日本領であるとかねてより主張している。つまりはロシアに占領されているというわけで、だからこそビザなし交流ならば、日本政府の立場を曲げることなく交流できていたのだ。
加えて日本政府では、こういった北方領土の現状から、一般国民に対しても、ロシアビザを取得した上での北方四島旅行を控えるように言ってきた。恐いのは、すでに占領されている四島に、既成事実を積み上げられていくことである。日本人がロシアビザで北方四島を訪れたなら、日本人自らがロシア領だと認めることになってしまうからである。
話が長くなったが、こんな「国境」の実情を、西牟田靖著『誰も国境を知らない』(情報センター出版局)ではじめて知った。
昨秋出版されたのだが、なかなか読む時間が取れずに、今週やっと読了したのだ。
西牟田君は、前作『僕の見た「大日本帝国」』で、大日本帝国の「かたち」がどんなだったかアジア各地を原付バイクで旅をして書いている。アジア各地に残った鳥居に、なるほど大日本帝国は、こんなところにまで及んでいたのかととても強い印象を残した。
そして膨張した「大日本帝国」は、第二次大戦に敗れて日本となり、国土も収縮した。
では現在の日本は、どんな「かたち」になったのか?
そんな素朴な疑問が、今回の本を書くきっかけになったそうである。
そこで彼は、日本の隅に位置する島々を訪れた。北方領土や現在韓国が実効支配している竹島、沖ノ島やいまや一般住民のいない硫黄島、小笠原島、与那国島、中国との軋轢がある尖閣諸島などだ。
ところが行けども行けども、一向に国境は見えてこないのだった。
それもそのはず、なぜなら日本の国境はすべて海の上にあるからだ。
大陸の国々を旅すると目にする、鉄条網の敷かれた国境など金輪際存在しない。
国境は概念としてはわかるが、目に見えないのが日本の実体で、つまりは「誰も国境を知らない」となってしまうのだった。
海の国境は、陸地で暮らす人類にとっては概念を超えることがない。しかしそこに経済的排他水域というものが入り込んできて、はじめて大切なものだと知る。魚やエネルギーなどそこには人類にとって必要な資源が眠っているからである。
そんな日本の国境について考えていたら、はるか遠く中東のガザからジャーナリストの常岡浩介が自身のブログでおもしろいことを書いていた。
http://www2.diary.ne.jp/user/61383/
なんと常岡は、エジプト側から国境の下に掘られたトンネルをくぐってガザに行ってきたと報告しているのである。
国境って、トンネルをくぐって行き来できるものだったのか?!
そのトンネルから、武器がパレスチナのハマスに渡った。そのことを理由にイスラエルはガザを空爆し、千人以上の犠牲者を出した。
日本の国境とパレスチナの国境を見比べてみると、まったく別物にちがいはないが、どちらの国境もややこしいのは同じだと思った。



















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