2009年7月10日 (金)

問題集になりました

 今週、さる教育関係の出版社から「作品掲載許諾のお願い」といった内容の書面が届いた。これまで点字本の許諾をしたことはあったが、教育関係からは初めてである。

 添付の書類を見てみると拙著『日本は世界で第何位?』(新潮新書)の中から、世界の肥満度に関する記述が抜粋されて、国語の問題となっているのだ。

 地理ならわかるが、国語である。

 ぼくの日本語文章が間違ってなかったということである。当たり前だが……。

 問1は、カタカナを漢字で書くのと、漢字の読みだ。

 問2は、空欄にあてはまる語や数字を入れるというもの。

 問3は読解力の問題である。

 以降問8まで読解力の問題が続くが、いずれも字数の制限があり、筆者でさえも頭を使わなければ解けない。

ムムム……こんなことを中三の子供たちはやっているのか。

これは新学社の「平成21年総まとめ国語三年」という問題集に収められるのだ。

昨日バーベキュー大会があったので、コピーして友人、知人に見せびらかした。教育関係の人たちもいて、「凄いですね」とほめられて、いい気になったところだ。

本を読んでもらえるのはもちろんうれしいが、ぼくの本など読まない中三のみんなが問題集というかたちでも、ぼくの文章に接してくれるのも、またうれしいものである。

ホクホクした気分でバーベキュー大会は終了し、最後にぼくと妻、一組の友人夫妻が残った。彼らは酒が強い。そして奥方は酔うほどに舌が滑らかになる性格である。

「岡崎さんねえ、この前の小説、いまいち納得がいかなかったわ。ラストシーンがあっさりしすぎて、最後まで読者を引っ張る力に欠けていたと思うのね」

「オイ、おまえ、酔っ払っているからって失礼だぞ。すみませんねえ」

 ご主人が言ってくれるが、奥方の言うとおりなのである。しかしぼくも負けてはない。

「再来週発売の『アフリカ・アンダーグラウンド』(祥伝社文庫)は、最後の最後まで、読者を飽きさせないですよ。これはもう自信があります。必ずや納得してもらえるはずですよ」

 ぼくも酔っ払っていたので、大きく出た。

「本当? 本当に?」と奥方。

「本当です!」とぼく。

 この夜は神津島の名焼酎盛若の「華」と、静岡は富士宮の富士高砂酒造の銘酒「駿州 中屋」がメインの酒となっていた。

 心地よい酔いに浸りながら、妻の運転で家路についたのは十一時過ぎである。

 

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2009年7月 3日 (金)

骨休め

 数年ぶりに箱根に行ってきた。

 この春から人生初の忙しさで、休みをすっ飛ばしたのも一度や二度ではなかった。先週もまた休めず、しかしこんなことではいかんと思って、二日間休みを取ったのである。

 だから箱根行きは、人生初の骨休みと言ってよかった。だいたいこれまでは、骨休めするほど仕事で疲れたことはなく、またそれほど仕事もなく、どちらかと言えば、明らかにヒマな人生を送ってきている。

 だからしみじみ、箱根へ向かう車の中で、

「これが骨休みなんだなあ」

 とぼくは呟いていた。

 骨休めなのだから、のんびりすればそれでいい。

 伊豆高原から伊豆スカイラインに960円も払って乗っても、一面霧で何も見えない。ふつうなら「通行料を返してくれ!」とでも言うところ、なにせ骨休めである。全然問題にしなかった。

 伊豆スカイラインから熱海峠、十国峠を経て芦ノ湖に降りる。ここでもまた霧の中である。一応箱根の関所を見学し、強羅に向かった。途中、彫刻の森美術館近くのそば屋で鴨南蛮そばを食べ、強羅から左に折れて、目指すはポーラ美術館である。

 入場料は1800円。高っ! さらに駐車場まで500円取られる。ここでもぼくはたいして文句は言わなかった。なぜなら、美術館の入場料は妻の負担だったからである。

 高いけれども、名画揃いのところはさすがだ。大好きなルソーの作品も良かったし、今度のぼくの小説で登場するフランス・ブルゴーニュ地方の小さな町、オーセールを描いたシニャックの作品も明るい色調でよかった。大好きなスーラもあったし、シャガールの描いた小さな町の家々がとても可愛かった。

 ガラス張りの一階からはヒメシャラの林が見通せ、また広々とした贅沢な空間は、ゆったりとした気持ちで絵画鑑賞できてとてもよかった。骨休めなのでなおさらである。気持ちがすっきりとした。

どうしてだろうか、名画を見ると心の中に溜まった廃棄物のようなものがきれいになくなる気がする。逆に素人の絵を見せられると、胸の中がざわつく。

その後、三時にはホテルに入ってのんびり湯に浸かり、部屋で一杯飲んでごろごろする。エステに行っていた妻が帰ってきて、テレビを観ていると、七時半の夕食だ。

仲居がいないのもいいし、レストランでの夕食もいい。最近はおもてなしとは名ばかりの押し付けがましいサービスのないホテルが人気のようだ。

平日にもかかわらず、レストランには大勢の客がいた。オシャレな和洋折衷料理に舌鼓を打って、食後は夜の町を散策である。

翌朝はチェックアウトギリギリの十一時頃まで、妻はスケッチ、ぼくは登山列車に乗ったりして過ごし、御殿場のアウトレットでショッピングをして帰宅した。

ドライブ、温泉、美味しい料理にショッピング、骨休めとはこういうものかと思った二日間である。

たしかに頭と財布は空っぽになった。

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2009年6月26日 (金)

寄る年波

今週に入ってようやく波がよくなってきた。

今年は四月からサーフィンしているのだが、昨年同様、波のコンディションがよくない。五月に一度よくなったが、その時は忙しく、到底海になど通えるような状況ではなかった。

今週、仕事の区切りが見えてきて、十日ぶりの休みに海に行った。翌日にはさらに波が高くなり、今シーズンのベストコンディションである。

昂ぶる気持ちを抑えつつ海に入った。

波の高さは頭半からダブルくらいで、上級者なら最高の波である。右から左へ、あるいは左から右へ波はきれいに崩れる。ただし崩れるポイントにムラがあって、ポジショニングが難しかった。

沖に行き過ぎれば波を捉えられなくなる。手前に居すぎれば、波に深く入りすぎて、波に乗る前に崩れてしまう。

上級者たちがボードに腹ばいになり左右、あるいは沖に行ったり戻ったりを繰り返し、波と波長を合わせようとするのに対し、ぼくはと言えば、時折動くくらいで波を狙って待つばかり。ボードに腹ばいになってパドリングばかりしていると疲れて、仕舞いに、サーフィンどころではなくなってしまうからである。

もはや四十半ばなのである。海上に漂う多くの地元サーファーたちの中では、たぶん最高齢にちがいない。さらにはぼくの場合は、下手さも群を抜いている。ガキの頃からやってきた彼らとはレベルが違いすぎるのだ。

だからと言って、なにも怯むことなどない。波はサーファーに対して平等である。上手い奴がより多くの波に乗れるに過ぎない。下手な者にも必ず数回のチャンスはくれるものである。

しかしこの日はなかなかチャンスが巡ってこなかった。乗れそうな波に、先に上級者に乗られてしまったり、乗れそうになりながらボードの角度が悪くて波に叩き潰されたりばかりだったのだ。

「一本、なんとか一本乗りたい」

 そう願って、荒れた呼吸を整えながら波待ちしていた。

 ついに着た。そう思ってパドリングした。

 スーッとボードが前に進んだ。波の斜面が右手に広がる。「イケる!」と思ったその矢先、下半身の運びが遅く、瞬間的にもたつく間に白波に潰された。

 二時間海上にいても、うろうろするばかりで一向に波には乗れない。疲労感だけが増す。今年初めての大きな波に体が反応できずに、結局海から上がった。

 昨日、リベンジを期して朝から海に向かった。波はもはやあまりない。せいぜい頭程度の高さだ。それでもまたもや下半身が動かなかった。二本ほどは乗ったが、リベンジというより返り討ちにあった気分であった。

今年初めて三日連続サーフィンに行って思った。

なんて体が言うことを利かないのか……。

年だなあ……としみじみ感じた今週でした。

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2009年6月19日 (金)

シークレットメール

 このところ、ちょくちょくシークレットメールが入る。

 それもまともなところからである。

 都心のAホテルは通常の三分の一の価格を提示し、またB観光地のホテルでは半額になっていた。今日は友人を通して、なかなか質のいいタイパッケージツアーの宣伝が飛び込んできた。

 行けるものなら行きたいが、八月か九月に中国東北旅行を考えているので、行くヒマがない。

このところ一ヶ月に一度は上京しているので、都心のAホテルには泊まってもいい。ただし一人で泊まるとなると贅沢である。妻が一緒ならいいが、いまのところその予定はない。中国に行くときにもし前泊が必要ならば考えよう。

先週は新宿のBホテルに泊まった。日曜宿泊だったので通常の半額の値段だ。近々骨休めに箱根旅行をすることになり、こちらも平日を選んだら、半額以下の料金で予約できた。

箱根が近ごろ流行っていると聞いていたが、調べてみると閑散期には思い切り値段を下げて、客足の減少を食い止めているのだ。

東京にしろ、箱根にしろ、インターネットの影響が大なのだろう。もう何年も前から欧米ではインターネットの導入で、同一サービスで料金の上下動が激しくなっている。同じサービスでも繁忙期は空気の値段そのものが高くなるといった発想で、値段が高めに、閑散期では空気の値段が安くなるというように安くなるのだ。

日本は農耕民族なので、みんなで一緒に休む習慣である。

だから、GW、お盆、正月と大型の休みのときには当然のように混む。

しかし農耕民族の習慣から外れる人たちが現れてきた。それが平日箱根を旅する人たちである。だからこそインターネット料金も、欧米並みに上下動するようになったのだ。

もうおわかりだろうが、それを牽引しているのが会社をリタイアした人たちである。彼らはみんなと一緒の時期に休む必要はない。

そんなことは何年も前からわかっていたことだ。

ぼくが言いたいのは、国内の一部旅行関係者が、ようやくインターネットを使って、こういった人たちに向けた新しいサービスを始めたということである。

不況を嘆いてばかりいないで、需要を掘り起こすことがどれだけ大事なことなのか考えさせられる。

送られてくるシークレットメールに、用もないのについホテル泊を考えてしまうぼくである。

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2009年6月12日 (金)

タイトル決定

 先週から新作に取り組んでいる。

 考えてみれば、今年初めての作品だ。去年から手がけている作品を何度も手直ししているうちに、あっという間に半年近くが経ってしまった。

 果たしてこれで費用対効果が適正なのか考えると恐ろしい。

 作品を書くのは文化的なことに思われるかもしれないが、その実商売の側面を免れない。

 一作書くのに時間だけ要して売れなかったでは、作家という職業は続けられなくなるのだ。

 村上春樹の新作が二週間でたちまち100万部に達したと報道されているが、これが同じ業界のことなのだから、余計に驚く。

 いったい何冊書けば100万部になど達するのだろう。そうは思いつつも、今書いている新作は、きっとベストセラーになるにちがいないなどと、妄想だけは人一倍強い。

 今日の午前中で今週の予定量を書き終えた。

 そして来月の出版に向けて作業がはじまった小説の資料を作って、編集者に送った。

 昨日出版社で会議が開かれ、昨年から取り組んできた小説のタイトルが決まったのだ。

 パリとアフリカを舞台にした国際謀略犯罪小説なのだが、『アフリカ・アンダーグラウンド』である。

 祥伝社文庫より7月20日発売の予定です。

 どうぞよろしく!

 自信作です。

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