贅沢な夕方ドライブ
このところ空気が澄んできた。
ビーチに行くと、伊豆の島々もよく見える。左手から大島、三角形の利島、ちょっと大きめの新島とその隣が平べったい式根島である。透明度の高い日は、新島の崖の岩肌までしっかり見える。また奥の三宅島がくっきりとする。
右の手前にあるのが神子元島灯台、その前を海の銀座みたいにタンカーや運搬船が行き来する。神子元島灯台周辺に集まっているのは、漁船か釣り船である。昔からの漁場だ。
そして、場所によって灯台の右に見えたり左に見えたりするのが神津島である。
これから春霞が始まる時期までは、海の見える家からは、夜の間、漁火もきれいに見えることだろう。
建国記念日の日、天気もいいので、妻が夕日を見に行こうと言い出した。
西伊豆は夕日の名所が多い。その中でもわりと家から近い奥石廊崎に行った。
日没時間は四時四十五分だ。四時過ぎに家を出る。
西日が眩しく、サングラスをしてこなかったことを後悔した。伊豆最南端の海岸を行く。複雑な地形のリアス式海岸とその向こうに広がる太平洋が美しい。やがて海抜が高くなる。誕生日プレゼントに妻からもらったカシオのプロトレックで海抜を確かめる。十メートルと出た。なんか間違っている。海を見下ろすと五十メートルくらいはありそうだ。
この時計はちょくちょく見るが、我が家にいても、海抜六十メートルと出たり、十五メートルだったりする。六十メートルが正しいはずだが、気圧との関係で誤差が出ることもあるのだ。
奥石廊崎は国定公園になっている。あいあい岬の駐車場に車を止める。別に奥石廊崎でいいのに、どうでもいいようなつまらない名前を付けるあたりがガッカリだ。しかし西伊豆には恋人岬という岬があって、ここで恋人同士がベルを鳴らすと永遠の愛が約束されるという。休みの日など大渋滞である。たしか夏の地震でベルが落ち、早速修復したとか。
あいあい岬にもベルはあった。ところがこちらは人気がないのか、ベルを鳴らす木の棒が、破損していた。
あたりはユウスゲの群生地だ。紀宮妃がお嫁に行く前に、美智子さまと最後の家族旅行で散歩を楽しまれた場所である。
美しい緑の海岸線と深いブルーの色を湛える駿河湾、湾の先には南アルプスが見え、薄い陸地を目で追っていくと、かすかに御前崎まで見通せる。
太陽が徐々に沈む。東側の空は暗くなり、オレンジ色に燃える太陽の上の空が淡いブルーできれいだ。
これぞミケランジェロのブルーだ。バチカンのシスティーナ礼拝堂の天井画『最後の審判』を染めるブルーは、落日のブルーなのかもしれない。
オレンジ色の太陽が海の彼方に沈んだ。どうしてか、太陽が海に沈む時には雲が現れるものである。その確率は高いと思うが、いかがだろうか。
帰り道、山の向こうにまん丸の大きな月が出ていた。
都合一時間ほどの、贅沢な夕方ドライブだった。



















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